研究用超遠心機から生産用連続超遠心機へ遠心条件を移行する

目的

機能性材料の開発段階において、ナノ粒子の分級や精製には研究用超遠心機が用いられる事例が多くなっています。開発した新材料を製品化するには、開発段階から量産化が可能な生産方法・工程を検討する必要があります。
そこで研究用超遠心機(バッチ)での遠心条件から、生産用連続超遠心機(連続)への条件移行について検討しました。
【主な処理物:インク、ナノ金属、顔料、CNTなど】

生産用連続超遠心機での分離イメージ

生産用連続超遠心機での分離イメージ図

ローター底部から注入した試料は、ローター内のコアに沿って流れます。
この時に分散試料は遠心力によって水平方向に移動し、ローターの内壁に沈殿します。
上澄み液はローター上部から排出され、回収タンクに回収します。
回転速度(遠心加速度)と送液量(流速)を調整することで、遠心条件を最適化します。

ポイント

1.研究室レベルでの処理量から、量産レベルの処理量へスケールアップすることが可能です。
2.研究用超遠心機で用いた遠心条件を、生産用連続超遠心機へ再現良く移行することが可能です。
3.フィルターでは難しいナノ粒子の分離・分級・精製に、超遠心機は有効です。

例1:全ての粒子を沈殿にして回収する場合【溶媒置換・濃縮】

研究用超遠心機を用いて、カーボンブラック分散液のすべての粒子を沈殿にすることが出来る遠心条件を求めます。この遠心条件から、生産用連続超遠心機で同等の分離結果が得られる条件を算出し、条件移行しました。

研究開発から生産に条件移行したイメージ図

研究・開発:分散粒子を全て沈殿にし、上澄み液を入れ替えることで、溶媒置換や濃縮が可能です。
生産:ローター内に粒子を全て沈殿にし、回収します。

例2:粗大粒子を除去し、微粒子を精製する場合【分級】

研究用超遠心機を用いてカーボンブラック分散液を分離し、その上澄み液に目的の粒度分布が得られる条件を求めます。 この遠心条件から、生産用連続超遠心機で同等の分離結果が得られる条件を算出し、条件移行しました。

粗大粒子を除去し、微粒子を精製に条件移行したイメージ図

遠心条件:35,000xg、6分間:上澄み液中の100nm以上の粒子が効果的に除去できています。
遠心条件:35,000xg、流量30L/hr:回収液中の100nm以上の粒子が効果的に除去できています。