イネのオルガネラ精製における遠心機活用例

新潟大学 農学部 応用生物化学科(三ツ井敏明教授研究室)
特任助教 及川 和聡 先生  博士(理学)

2002年~2008年、日本学術振興会 特別研究員
2004年、東京都立大学理学研究科大学院博士課程 生物科学専攻修了
2008年、基礎生物学研究所 高次細胞機構研究部門 研究員
2013年、新潟大学 農学部 応用生物化学科 特任助教

私たちの研究テーマ

イネは、人類の主要な穀類の1つである。近年私たちをとりまく環境は、悪化の一途をたどり、高温や高二酸化炭素濃度の上昇は特に懸念される環境破壊要因である。高温・高二酸化炭素条件下においては、米の品質低下や障害が生じることが多く報告されている。
私たちの研究室では、イネを材料として、細胞生物学や生理学、生化学的手法を用いて、様々な環境ストレス下でも高品質なイネの作出を 目指して研究を行っている。特に細胞小器官に注目し、細胞内タンパク質輸送やストレス応答性遺伝子発現、オルガネラ相互作用機構等の研究も進めている。
最近では、「新潟大学・刈羽村先端農業バイオ研究センター」の運営を通して、高温・高二酸化炭素耐性イネ育成や変異体の選抜等も行っており、得られた成果を地域に還元することで,農林業の活性化や里山・海岸等環境保全を図っています。

刈羽村先端農業バイオ研究センター

写真左:同研究室の三ツ井教授がセンター長を務める「新潟大学・刈羽村先端農業バイオ研究センター」
写真右:研究室からは、天気が良い日は佐渡島が見渡せる。土地柄、イネの研究が盛んな新潟大学。
コメはアジアにおける主食として、学術的にも食料的にも日本の重要な研究対象の一つだ。

私の研究テーマ
分泌経路を介してプラスチドへ輸送されるアミラーゼ輸送機構の解析

環境や成長に応答して適切にデンプンを分解することは、転流を介した各組織へのエネルギー供給や種子への貯蔵など、植物の生存戦略にとって重要な機構です。アミラーゼはそのデンプン分解に関与する主要なタンパク質の1つであり、多くの生物が保持しています。
私達の研究室では、イネαアミラーゼが分泌経路(ER‐ゴルジ体)を介して葉緑体へ輸送されることを明らかにしました。現在、このアミラーゼの葉緑体輸送機構に注目して、その関連因子の同定とその制御機構を明らかにする試みを行っています。

分泌経路を介してプラスチドへ輸送されるアミラーゼ輸送機構の解析

私の遠心機使用背景

超遠心機スイングローター2種類を使い分けた、効率的なオルガネラ単離

生化学的な方法として超遠心機スイングローターを用いて、変異体や形質転換体、また種々の環境条件下で生育させたイネから、ゴルジ体や葉緑体、ミトコンドリアといった細胞小器官(オルガネラ)をなるべく破砕しないように単離精製しています。
はじめに容量のやや大きめの40mLチューブが使用できるスイングローターP32STを用いて、全抽出液を数回精製した後、目的のオルガネラ画分を濃縮します。次に細長い13mLチューブの使用が可能なスイングローターP40STに変えて密度勾配遠心法を行い、精製度を徐々に上げます。

超遠心機スイングローター2種類を使い分けた、効率的なオルガネラ単離

写真1:研究室には多くのイネが培養されている。
写真2:1回の遠心でケース10箱分使用します。
写真3:イネをハサミでちょきちょき。大変ですが、研究のため。
写真4:いざ、超遠心機へ。スイングローターで精製アップ。

細胞分画(ゴジル体)の工程

ポイント:細長い13mLチューブで「浮上分離」を2回行うことにより、ミクロソームからゴルジ体を精度よく分離することができ、ミトコンドリアなどの微量なコンタミを取り除くことが出来ます。

himac遠心機のお勧めポイント

P32STスイングローター

写真e:研究室にて遠心機安全講習会を実施。学生の皆さんに安全にご使用いただく為に基礎からお話させていただきます。
写真f:超遠心機(CP-NX)はローターごとの使用回数や積算運転時間等を自動集計し、寿命管理を自動で行います。ローターの運転日誌が不要になり、先生の機器管理の手間を省きます。
写真g:「40mLチューブのP32STスイングローターはバケットを上から挿入する方式でセットが簡単!」