タンパク質構造解析業務での遠心機活用例

理化学研究所 放射光科学総合研究センター 生体金属科学研究室
城 宜嗣 先生  博士(工学)

1986年、京都大学大学院工学研究科石油化学専攻博士課程修了
1987年、理化学研究所研究員
2000年、城生体金属科学研究室 主任研究員

私の研究テーマ

タンパク質構造解析を介し、化学反応の仕組みを探る

城先生の研究室では、主に生命維持に必須の金属元素である鉄を含む膜タンパク質や酵素などの立体構造解析を行っており、その構造情報をもとに生理活性さらには化学反応の仕組みを探る研究を行っています。将来的には、SACLAなどの理研(播磨)に隣接されたX線自由電子レーザー施設(XFEL)を活用し、活性反応場でのタンパク質複合体の離合集散の様子などを、分子レベルで可視化できる技術を目指しています。

SPring-8で反応過程を見る

一般的に膜タンパク質は、構造解析に適した良質な結晶を得ることが大変困難なため、構造の解明が進んでいませんでした。城先生は緑膿菌を用いて発現させた膜タンパク質を高純度に精製し、良質な結晶をつくり出すことに成功しております。
微小結晶でも高い分解能で解析できる、大型放射光施設「SPring‐8」を活用しX線結晶構造解析を行い、一酸化窒素還元酵素(NOR)をはじめとした、様々なタンパク質の立体構造を明らかにされております。

図:NOR(一酸化窒素還元酵素)の結晶と結晶構造

研究室風景

研究室風景

集菌用大容量ローター:試料や量によって使い分けています。
集菌用専用ボトル:何本も用意し、どんどん集菌します。
精製用超遠心機は城研究室の必須アイテムです。

私の遠心機使用背景

我々が研究対象としている膜タンパク質は、1,000mLの培養液から1mg程度しか得られない。研究を進めるためには大量の培養・精製を行う必要がある。

【集菌】大容量1,000mLボトルを使用した、効率的な緑膿菌大量集菌
(R9AFアングルローター/1,000mLボトル)

1,000mLボトル4本で遠心をしている間に、別の1,000mLボトル4本に培養液を注いでおく。
遠心が終わり次第、ボトルを入れ替え遠心を開始。これを繰り返し、20Lもの培養液から効率良く菌体を集めている。

大容量1,000mLボトルを使用した、効率的な緑膿菌大量集菌

写真a:城研究室では、とにかく大量に緑膿菌を回収する為、5Lの培養フラスコを4本で20Lの緑膿菌を培養する。
写真b:集菌が終わったボトルから順次-80℃冷凍保存へ。

【超遠心精製】中容量アングルローターを使用したショ糖密度勾配による膜タンパク質の分画

大量に得られた膜画分の精製の第一ステップがショ糖密度勾配法である。
一度の遠心で大量の膜画分を処理するために、70mLボトルを6本遠心できるP45ATを用いている。
P45ATアングルローターは、使いやすいスクリューキャップボトルで中容量を20万xg以上で遠心可能です。

R9A2アングルローター
  • 界面活性剤で可溶化後、ショ糖密度勾配遠心
  • 写真c:超音波破砕した緑膿菌を、40,000rpm / 1h / 4℃、P45ATローター/70PCボトルで超遠心分離。
    上清が可溶性画分(茶色)、沈殿が膜画分(赤紫色)
  • 写真d:アングルローターでも非常に奇麗に分離しています。目的のタンパク質をバンドにし、精製後、結晶化へ。

【陰イオン交換カラム精製】可溶性画分の分画

「結晶構造解析では量と精製度が重要。とにかく遠心機で集菌して、慎重に精製していく。」

陰イオン交換カラム精製、可溶性画分の分画

写真e:可溶性画分は別途取り出し、陰イオン交換カラムにかけて精製。
写真f:フラクションコレクターで分取。青は銅を含んだタンパク質、赤は鉄を1つ含んだタンパク質、緑茶色は鉄を4つ含んだタンパク質。