himac APPLICATION

No.73 MARCH 1997

himac エルトリエータ細胞分離システムによる株化細胞UT-7の分離

機種:himac エルトリエータ細胞分離システムによる株化細胞UT-7の分離

himac エルトリエータ細胞分離システムを用いて、株化細胞UT-7のG2/M期細胞を高純度で分離した例

himac エルトリエータ細胞分離システムは遠心力だけでなく、遠心力に対抗する流れの力との二つの力を利用して、細胞レベルの大きさのもの(2~50μm程度)を分離するシステムです。
このシステムを利用すると、遠心力だけでは難しい細胞のサイズごとの分離が可能となります。
そのため、株化細胞の増殖の際に生じる各増殖段階の中から、同一周期にある細胞の分離に有効となります。*1, 2)
ここでは、特にG2/M期細胞の純度を向上させるため、細胞周期進行阻害剤Nocodazole*3)を細胞に作用させました。
これにより分離前のサンプル中のG2/M期細胞の割合を増やすことができ、本システムによる分離純度の向上が可能となります。
なお、サンプルには、血小板増殖因子(Thrombopoietin)の発見により*4)、その分化増殖及び血小板産生機構解明のモデルとしての応用が期待される巨核球系株化細胞UT-75)を用いました。

1. 分離結果

(1)フラクション1にG0/G1期の細胞がほぼ90%の純度で得られました。
(2)フラクション2にS期の細胞が70%の純度で得られました。
(3)フラクション5にG2/M期の細胞が90%の純度で得られました。

以下に分離前(Fig. 1)とフラクション5(Fig. 2)に得られた細胞のフローサイトメトリー測定結果を示します。
(Propidium Iodide staining and Becton Dickinson flow cytometry analyzer analysis ; FACScan, Becton Dickinson

表1. 分離条件と結果の一覧表

Fraction No. 流量
(ml/min)
細胞数
(×107コ)
Viability
(%)
トリチウムチミジン
取込み量*
細胞の割合
(%)
備考
分離前 - 10.0 93% - G0/G1:11%
S:45%
G2/M:44%
Fig.1
1 17 0.6 82% 3848.6 G0/G1:90%  
2 20 1.4 98% 31706.2 S:70%  
3 24 1.7 98% 40221.5 -  
4 27 1.3 98% 38937.6 -  
5 30 1.0 87% 7809.6 G2/M:90% Fig.2
6 33 0.5 96% 50608.5 -  
7 36 0.3 100% 33746.2 -  
合計 6.8 - - -  
  • 液体シンチレーションカウンターによる測定

以下に分離前とフラクション5で得られた細胞のライトギムザ染色図を示します。

2. 分離方法

(1) サンプル:ヒト巨核芽球性白血病由来細胞株 UT-7、5×107~3×108 cells
(2) バッファ:PBS(Dulbecco's PBS)、0.01(w/v)%EDTA-2Na及び1(v/v)%FBS添加

(3) 分離手順

  1. CR7D2形 himac 小形冷却遠心機を用い、1,000rpm、10分(4℃)遠心し、細胞を集める。
  2. PBSバッファまたは新鮮培養液10mlに再懸濁する。
  3. 回転速度2,000rpm、流量14ml/minでサンプルを供給し、100ml程分画した後、表1に示した条件で分離を行う。
  • 本実験は自治医科大学・血液学教室及び血液学研究部門・造血発生学教室との共同研究によるものです。

(参考文献)

  1. Terui, Y., Furukawa, Y., Kikuchi, J., Saito, M., J.Cell. Physiol, 164, 74(1995).
  2. HIMAC APPLICATION No.65(1994).
  3. Kikuchi, J., Furukawa, Y., et al., Blood., 89, 3980 (1997).
  4. Bartly, TD. et a1., Cell, 77 , 1117(1994).
  5. Komatsu, N. et al., Cancer Res., 51, 341(1991).