himac APPLICATION
No.70 DECEMBER 1994
分離用超遠心機によるLipoprotein(a)S1タイプの分離
機種:CP100α形高機能分離用超遠心機
P100ATアングルロータによるヒト血清中Lipoprotein(a) S1タイプの高純度、迅速(4.5時間)分離法
血清中に含まれているリポタンパク質は脂質の代謝に密接な関係があり、高脂血症などに関する研究分野で注目されています。
中でもその一種Lipoprotein(a)(Lp(a))については、その血中濃度により動脈硬化性疾患の危険因子になりうるという報告 *1)の後、
動脈硬化症との関連が盛んに研究されるようになりました。*2),*3)
しかしながら、このLp(a)はLDL、HDLと密度が近接してるため、密度の違いを利用するだけの通常の遠心分離法では高純度分離は困難でした。そこで、まず最初に密度の違いによる分離を行った後、Lp(a)の粒子の方がLDLやHDLの粒子よりも大きいことに着目し、大きい粒子の方が速く浮上(沈降)するという原理(浮上(沈降)速度法)に基づき分離条件を検討しました。
なお、今回はLp(a)の中でも特に動脈硬化症との関連が示唆されているものの1つであるLp(a)S1タイプ *4)について分離を 行いました。
1. 使用機種
本体:CP100α形 himac 高機能分離用超遠心機
ロータ:P100ATアングルロータ
チューブ:4.7PCアツチューブ(ただし、ここで使用したチューブは再使用しないで下さい)
キャップ:B-Tiリッド(60,000rpm以上で遠心する時には必ず使用して下さい。チューブが変形してロータから抜けなくなることがあります)
2. 分離結果
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(1) ポリアクリルアミドゲル電気泳動*により純度を検定しました。(図1)
(2) Lp(a)、HDL濃度を測定しました**。(表1)
Lp(a)濃度 (mg/dl) |
HDL-コレステロール 濃度(mg/dl) |
|
---|---|---|
血清 | 72.5 | 78.5 |
Lp(a) 画分 |
1.75 (回収率21.8%) |
検出感度以下 |
表1.Lp(a)分離結果
* ポリアクリルアミドゲルリポプロテインディスク電気泳動用試薬;リポフォー(常光)
** Lp(a)濃度:ティントリエーゼ・Lp(a)(コスモ・バイオ)HDL濃度:自動分析機 Pramax plus(Baxer、検出感度10mg/dl以上)
3 分離方法
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- 比重液A*5)(1.006g/cm3): NaCl 11.40gとEDTA-2Na0.1gを1,000mlのフラスコにいれ、 蒸留水500mlと1N NaOH 1mlを加えて、よく攪拌し溶解させる。ついで蒸留水で1,003mlにする。(NaCl:0.195mol)
- 比重液B*5)(1.182g/cm3): NaBr 24.98gを比重液A 100mlに加える。(NaCl:0.195mol,NaBr:2.44mol)
- 比重液C*5)(1.478g/cm3): NaBr 78.32gを比重液A 100mlに加える。(NaCl:0.195mol,NaBr:7.65mol)
- 比重液D(1.08g/cm3): 比重液A(1.006g/cm3)と比重液B(1.182g/cm3)を1.3:1の比率で混合する。
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本アプリケーションは、自治医科大学・大宮医療センター、櫻林郁之介教授、久保信彦先生らとの共同研究によるものであり、
詳細は第41回日本臨床病理学会において発表されています。*6)。
(参考文献)
- Utermann G.,Science,246,904(1989).
- Fless G.M.,J.Biol.Chem.,267,339(1992).
- Metcalfe J.C.,Nature,370,460(1994).
- Utermann G.,et al.,J.Clin.Invest.,80,458(1987).
- 生化学実験講座 第9巻″脂質の代謝″,p.454-456(東京化学同人).
- 村上智子ほか、第41回日本臨床病理学会抄録集、p.68(1994).