himac APPLICATION

No.67 DECEMBER 1994

細胞への刺激や損傷の少ないhimac エルトリエータ細胞分離システムによる分離

機種:高速冷却遠心機用SRR6Y形エルトリエータロータ

himac エルトリエータ細胞分離システムによる分離は、細胞に刺激や損傷を与えないことを単球の分離において示した例

himac エルトリエータ細胞分離システムは遠心力だけでなく、細胞レベルの大きさのもの(2~50μm程度)をその大きさごとに分離することが可能です。応用例としては、血液細胞中の単球*1)、酵母細胞*2)、株化細胞の細胞周期3)、肝細胞における非実質細胞からの伊東細胞(FSC)や類洞内皮細胞、クッパー細胞などの分離*4)があります。
単球の分離において、プラスッチクシャーレへ接着させて分離する方法では細胞に対し刺激や損傷を与えることが多く、分子生物学や接着因子に関連する実験には不適当でした。
しかし、本システムにより得られた単球には、このような刺激や損傷はほとんどなく、これらの研究にも適用が可能です*5)
また、接着させて得る方法よりも短時間で、高純度、高回収率が期待できます。

実験結果

本システムにより分離した単球には、刺激や損傷によって誘導されやすいInterleukin-1β(IL-1β)やInterleukin-1receptor antagonist(IL-1ra)*6) messenger RNAの発現は見られず、単球をnascentな状態で分離できました。
以下にIL-1β(Fig.1)、IL-1ra(Fig.2)のmessenger RNAをノーザンブロッティングにより検出した結果を示す。

表1 単球分離結果比較(回転速度:2,000rpm)

分離法 エルトリエータ法 接着法
採血量 100ml 400ml
回収細胞数 1.8×107cells 1×107cells
純度 91% 80%

使用機種

遠心機:CR-E/Fシリーズ himac 高速冷却遠心機
ロータ:R5E形 himac エルトリエータロータ
チャンバ:スタンダードチャンバ

実験方法

  1. グアニジンチオシアネート法により単球を溶解し、himac CS120FX形分離用超遠心機にRP120AT2ロータを用い、120,000rpm、2.5h(15℃)超遠心分離し、総RNAを抽出7)しました
  2. RNA10μgを2%(w/v)アガロースホルムアルデヒドゲルで電気泳動し、ナイロンメンブレンフィルターに転写しました
  3. 32P-dCTPで標識した、ヒトIL-1β及びIL-1raのcDNA断片とハイブリダイズさせ、X線フィルムで検出しました。
  • 本実験は自治医科大学・血液学研究部門・造血発生学教室との共同研究によるものであり、この応用例が第56回日本血液学会抄録集において発表されています*8)

(参考文献)

  1. himac APPLICATION No.48(1992).
  2. himac APPLICATION No.58(1992).
  3. Terui Y.,Furukawa Y.,Kikuchi J.,Saito M.,J.cell.Physiol.,164, 74 (1995).
  4. 向坂彰太郎、釈迦堂 敏、坂本雅春、吉武正男、谷川久一、代謝、28,(No.11),77(1991).
  5. Furukawa Y.,Kikuchi J.,Terui Y.,Ohta M.,Kitagawa S.,Miura Y.,Saito M., Jpn.J.Can.Res.,68, 208 (1995).
  6. Dinarello C.A.,Blood,77,1627-1652(1991).
  7. himac APPLICATION No.40(1992).
  8. 菊池次郎ほか、第56回日本血液学会抄録集,p.540(1994).