himac APPLICATION
No.65 DECEMBER 1994
himac エルトリエータ細胞分離システムによる株化細胞HL-60の分離
機種:高速冷却遠心機用SRR6Y形エルトリエータロータ
himac エルトリエータ細胞分離システムを用いて、株化細胞HL-60を細胞周期毎に分離した例
himac エルトリエータ細胞分離システムは遠心力だけでなく、遠心力に対抗する流れの力との二つの力を利用して、細胞レベルの大きさのもの(2~50μm程度)を分離するシステムです。
このシステムを利用すると、遠心力だけでは難しい細胞のサイズごとの分離が可能となります。
そのため、HL-60*1)など株化細胞の増殖の際に生じる各増殖段階の中から、同一周期にある細胞の分離に有効となります。従来のアフィディコリンのようなDNA合成阻害剤などを用いる必要がないため、細胞に物理的、代謝的に損害を与えることがなく、短時間にいくつかの周期の細胞を高純度、高回収率で分離することが可能です*2)。
1. 分離結果
- フラクション1と2に G0/G1期の細胞がほぼ100%の純度で得られました。
- フラクション3にS期の細胞が72%の純度で得られました。
- フラクション6に G2/M期の細胞が90%の純度で得られました。
以下に分離前(Fig.1)、フラクション2(Fig.2)、フラクション3(Fig.3)、フラクション6(Fig.4)に得られた細胞のフローサイトメトリー測定結果を示します。
(Propidium Iodide staining and Becton Dickinson flow cytometry analyzer analysis; FACScan,
Becton Dickinson)
表1. 分離条件と結果の一覧表
フラクション | 回転速度 (rpm) |
流量 (ml/min) |
分画時間 (min) |
分画量 (ml) |
細胞数 (×107コ) |
細胞の割合 (%) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
分離前 | - | - | - | - | 18.0 | G0/G1:38% S:40% G2/M:20% |
Fig.1 |
1 | 2,000 | 17 | 11.8 | 200 | 1.4 | G0/G1:100% | Fig.2 |
2 | 2,000 | 19 | 10.5 | 200 | 4.6 | - | |
3 | 2,000 | 21 | 9.5 | 200 | 2.3 | S:40% | Fig.3 |
4 | 2,000 | 23 | 8.7 | 200 | 1.9 | - | |
5 | 2,000 | 25 | 8.0 | 200 | 1.2 | G2/M:90% | |
6 | 2,000 | 27 | 7.4 | 200 | 0.6 | G2/M:90% | Fig.4 |
合計 | - | - | 55.9 | 1,200 | 12.0 | - |
表2. G0/G1期細をDNA合成阻害剤により得た時との比較
純度 | Viability | 備考 | |
---|---|---|---|
エルトリエータ 細胞分離システム |
100% | 100% | Fig.5 |
DNA合成阻害剤※ | 80% | 80% | Fig.6 |
- Aphidicolin 2.5(μg/ml)over night incubation(37℃)*3)
2. 分離方法
(1) ヒト前骨髄性白血病由来細胞株 HL-60、1.8×108cells
(2) PBS(Dulbecco's PBS)、0.01%(w/v)EDTA-2Na 及び1%(v/v)FBS添加
(3) 分離手順
- CF7D 小型冷却遠心機を用い、1,000rpm、10分(4℃)遠心し、細胞を集める。
- PBSバッファ 10ml に再懸濁する。
- 回転速度 2,000rpm、流量 14ml/min でサンプルを供給し、100ml 程分画した後、表1に示した条件で分離を行う。
- 本実験は自治医科大学・血液学研究部門・造血発生学教室との共同研究によるものであり、 この応用例が第56回日本血液学会総会において発表されています 4)。
(参考文献)
- Collins S. J., Gallo R., Gallagher R.E., Nature, 270, 347(1977).
- Terui Y., Furukawa Y., Kikuchi J., Saito M., J.Cell. Physiol.,164, 74 (1995).
- 奥田篤行・木村元喜:動物細胞利用実例化マニュアル, p.200-215, リアライズ社(1984).
- 照井康仁ほか、第56回日本血液学会抄録集, p154(1977).