himac APPLICATION

No.100 DECEMBER 1999

エルトリエータ細胞分離システムを用いて、マウス骨髄から血液幹細胞を分離濃縮した例

機種:R5E形エルトリエータ細胞分離システム

エルトリエータ細胞分離システムを用いてマウス骨髄から赤血球を除去し、血液幹細胞(CD34陰性、c-kit陽性、Sca-1陽性、Lineage陰性 細胞)を約4倍の濃度に、セルソータにアプライする前の細胞数を約1/4まで濃縮しました。
血液幹細胞の分離は幹細胞研究の進展に伴い、近年盛んに行われるようになりました。この際、幹細胞の分離は、細胞表面マーカによるフローサイトメトリー法(セルソータ)が用いられております。
しかしながら、分離における回収率、細胞生存率の低さや分離に長時間を要する等の問題から、その効率化が望まれておりました。そこで、エルトリエータ細胞分離システムを前処理に用いて、骨髄細胞中の幹細胞を濃縮し、セルソータによる分離の効率化を図りました。

1. 分離条件および結果

サンプル:マウス骨髄細胞 約1×108個(幹細胞*純度:約0.1%)
*幹細胞1):CD34陰性、c-Kit陽性、Sca-1陽性、Lineage陰性 細胞)

Fr. No. 流量 分画量 回収全細胞数 幹細胞数 幹細胞純度
1 15ml/min 200ml (全赤血球) 0 0%
2 20ml/min 200ml 7.0×106 cells 9,800 0.14%
3 25ml/min 200ml 1.5×107 cells 58,500 0.39%
4 30ml/min 200ml 9×106 cells 36,000 0.40%
5 35ml/min 200ml 3.3×107 cells 0 0%
Total - 1000ml 6.4×107 cells 105,200 -

(回転速度:3,000rpm)

表2 分離結果まとめ

  分離前 分離後 (Fr.No.3,4) 濃縮率/回収率
全細胞数 1.0×108 cells 2.4×107 cells 1/4
幹細胞純度 0.1% 0.4% 4倍
幹細胞数 約1×105 cells 9.5×104 cells 約95%

2. 分離方法

  1. マウス骨髄液の採取
  2. PBS(-)で洗浄し、10~15mlに懸濁
  3. エルトリエータ細胞分離システムによる分離
  4. フローサイトメトリー法による分離(Becton Dickinson社製FACS Vantage)
  5. 血液幹細胞

エルトリエータ細胞分離システムを用いた前処理により、血液幹細胞の回収率、生存率の向上と分離時間の短縮が可能になります。また、エルトリエータロータにより分画した幹細胞問における異質性が報告されるなど3)、本システムの幹細胞研究へのさらなる応用も期待されています。

3. 使用機種

遠心機 :CR-F/Gシリーズ himac 高速冷却遠心機
ロータ :R5E形エルトリエータロータ
チャンバ :スタンダードチャンバ

4. References

  • Osawa M, Hanada ft Hamada H, Nakauchi H., Science,273,242-245 (1006).
  • Uchida N., et al., Exp.Hematol.,24,649-669 (1996).
  • Ortiz M., et al., Immuniff,10,173-182 (1990).
  • 実験は筑波大学医学部・免疫学教室。中内教授のご協力により作成したものです。